わが国の母乳もPCDDs/PCDFs、Co-PCBsや有機塩素化合物で汚染されている。一方、われわれが日常摂取しているPCDDs摂取量は数pg/kg/dayでありその90%以上が食事からの摂取であると言われているが、正確な摂取量のdateはない。本申請では、PCDDの母乳中濃度と食事中濃度との関係を明らかにし、母乳から見た食事中の無作用濃度を推測する目的とする。 厚生省の国民栄養調査に基ずく食品別摂取量表より食品を13群に分類し、各群の摂取上位食品を最低89品目を購入し、各品目の摂取量に応じて調理調整して、各群ごとに混合した試料(マーケットバスケット法)による食品群中のPCDDsを分析することにより、日本人のPCDDs一日摂取量を明らかにした。PCDDsの一日摂取量は53TEQ pg/成人/日(1.1REQ pg/kg/日)で、食品分布は魚類食品(64%)、乳製品(9%)、肉・卵食品(8%)であった。しかしながら、これらのPCDDs汚染はわが国の一日許容摂取量(ADI、暫定基準、100pg/kg/day)を下回っている。一方母乳中のPCDDs濃度は16TEQ/pptで、母乳からの乳児のPCDDs摂取量は72TEQ pg/kg/dayであり、わが国の一日許容摂取量(ADI、暫定基準、100pg/kg/day)に近い値になっている。女性がADIを下回る量のPCDDsを日常食事から摂取していても妊娠出産して乳児を母乳育児すると、母乳経由によるPCDDsの乳児摂取量はわが国のADIに近い値になる。すなわち、母親が食事中から摂取するPCDDs量の65倍が乳児摂取量になる。 わが国のPCDDsの一日許容摂取量(ADI、暫定基準、100pg/kg/day)を乳児の基準と考えると、母親の食事中のPCDDs量は1.5pg/kg/dayになる。
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