研究概要 |
女性におけるアルコール代謝は,男性と異なり月経周期の影響を受けること,そして女性は,男性よりアルコール依存症や臓器障害に陥りやすいことが知られている.健康な日本人女性(年齢19〜28歳)11名を募り,充分な説明の後,同意書を得,のべ22回の飲酒実験を行った. アルコール用量は体重kg当たり0.1gとし,午前9時空腹時に純水アルコールを16%(v/v)に調整し経口的に投与し,飲酒前と飲酒開始後30分,1時間及び2時間に採血,同時に呼気も採取し,アルコール及びアセトアルデヒド濃度を測定した.また,血漿中の性ホルモンをRIA法により測定,代謝酵素であるアルコール脱水素酵素(ADH2)及びアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の遺伝子型を白血球から抽出したDNAよりPCR法を用いて検出した.各被験者とも14日間の間隔をおいて2回飲酒実験を行い,月経周期の排卵前期及び黄体期に実験を行えるように配慮した.これらをCaucasian(フィンランド人)のデータと比較,解析した. 飲酒後のアセトアルデヒド濃度は,ALDH2の遺伝子型の影響を強く受け,ALDH2^*1/^*1型(4名)において0〜2μM, ALDH2^*2/^*1型(4名において10μM前後,ALDH2^*2/^*2型(3名)において20〜50μMを呈し,ADH2の遺伝子型による有意な差異はなかった.血漿中の性ホルモンとの関係について,エストロゲンと血中アセトアルデヒド濃度との間に相関が得られ,エストロゲンの高い時期にアセトアルデヒドが高値を示すことが明らかとなった.
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