研究概要 |
クローン化したDNAプローブを使ってDNAの制限酵素断片長多型(ミニサテライト多型)を検出するサザン法は,手間がかかるうえに,アリールの長さを正確に決めることができないため,だんだん使われなくなり,PCR法によって簡単に増幅でき,1塩基の違いを識別できるマイクロサテライト(STR)の型判定が法医学的DNA多型分析の主流になった. STRのアリールを正確に決めるには,PCR産物を変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動した後,アリールの1本鎖を自動シ-クェンサーで分析するか,なんらかのマニュアル法で検出する.自動シ-クェンサーは高価で,簡単には購入はできない. そこで,経済的に,かつ簡易にバンドを検出するために,AAAG(すなわちCTTT)を反復単位とするSTR座であるACTBP2,AluVpA,FGA,D8S320,D11S488,D11S554を増幅し,変性ゲル電気泳動し,ナイロン膜にサザン・ブロットし,これを10分間紫外線照射することによってCTTT鎖をチミンダイマー(T-T)化した.このT-Tを,本研究で作製したモノクローナル抗体T-T(ペルオキシダーゼ標識)で首尾よく検出することができた. モノクローナル抗T-T抗体は,簡易な方法で作製した.細胞融合のパートナーであるマウス骨髄腫細胞P3U1の浮遊液の煮沸遠心上清を紫外線照射したもので同系マウスを免疫し,その膝窩リンパ節細胞とP3U1細胞を融合させて培養し,常法に従って抗T-T抗体産生ハイブリドーマをクローン化した.その後,抗体を含む腹水を得て,抗体をアフィニティ精製し,酵素標識して,STR分析に使用した. 本法は,簡易な方法であり,法医学の実務への応用に適する.
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