研究概要 |
1.回虫抗原感作により作成した遅発型喘息モルモットモデルを用いて、漢方製剤である紫朴湯の効果を検討した。紫朴湯は遅発型喘息反応を抑えるとともに、肺組織中への肥満細胞/好塩基球や好酸球の集積を抑制した。また、肺組織中のTNF-αやIL-1α、β、GM-CSFの発現を免疫組織化学的に検討したところ、紫朴湯の前処理によりこれら炎症性サイトカインの発現が抑制された。 2.気管支喘息患者から生検により肺組織を採取し、好酸球の集積に関与する接着因子の発現を検討した。対照疾患と比較して、好酸球,肥満細胞/好塩基球などの炎症細胞上のMac-1,LFA-1,VLA-4の発現が著明に上昇していた。それらのligandであるICAM-1,VCAM-1,E-selectinは血管内皮細胞や気道上皮細胞上に強く発現されていた。 3.ヒト好塩基球性白血病細胞株KU812Fの増殖・分化に対する抗アレルギー剤および漢方薬の効果を検討した。その結果、azelastin,anlexanox,DSCG,baicalein,柴胡サポニンSa/Sd,人参サポニンRh2、紫朴湯および小青竜湯はKU812Fの分化およびヒスタミン含量を用量依存性に抑制した。 4.大気汚染による喘息の原因の一つとして注目されている二酸化窒素(NO2)2ppmをモルモットに12時間吸入させたところ、ヒスタミンに対する気道過敏反応が亢進し、ヒスタミン分解期酵素の一つであるHMTの気道組織における活性およびmRNAレベルが低下していた。このことから、NO2による気道過敏性の亢進は、少なくとも一部分、ヒスタミン代謝の障害によることが示唆された。 5.気管支喘息および慢性気管支炎患者からの喀痰中細胞の分画と炎症性サイトカイン発現を検討した。その結果、気管支喘息では好酸球とGM-CSFが、慢性気管支炎では好中球とIL-8がそれぞれ主細胞と主サイトカインであり、サイトカイン発現の違いが浸潤細胞の違いをもたらすことが示唆された。 6.気管支喘息や鼻ポリ-プでは基底膜肥厚や平滑筋肥大の所見が観察されるところから、 これら細胞の増殖因子であるPDGFの発見を検討した。その結果、正常と比較してPDGF mRNAおよび蛋白レベルが上昇しており、その産生源は好酸球であることが分かった。
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