研究概要 |
1,ラットを用いて中枢性Thyrotropin releasing hormone(TRH)の肝血流に対する作用を検討したところ、脳槽内にTRHを投与すると投与後15分をピークとして1‐100ngの範囲で肝微小血流量が用量依存性に増加することを見いだした。本作用は、迷走神経肝臓枝切断術、アトロピン、インドメタシン、L‐NAMEの前投与により消失したが、脊髄切断術は何の影響も及ぼさなかった。 2,ラットを用いて中枢性TRHの肝増殖能に対する作用を検討したところ、意識下ラットの脳槽内にTRHを投与すると投与後24時間をピークとして0.5-10ngの範囲で肝増殖機能が用量依存性に亢進することを見いだした。本作用は、迷走神経肝臓枝切断術、アトロピン、インドメタシン前投与により消失したが、脊髄切断術およびL-NAMEの前投与は何の影響も及ぼさなかった。 3、ラットを用いて中枢性TRHおよびCorticotropin releasing factor(CRF)の四塩化炭素誘発急性肝障害に対する効果を検討したところ、TRHアナログの脳槽内投与により、四塩化炭素による24時間後のALTの上昇が用量依存性に抑制された。本作用は、アトロピン・インドメサシン・迷走神経切断術前処置によって消失したが、L-NAME・6-OHDAの前処置では影響をうけなかった。更にCRFの脳槽内投与により四塩化炭素投与24時間後のALT値は用量依存性に上昇した。 4、中枢性ペプチドが肝臓内のサイクリックAMP合成に及ぼす効果を検討したところ、TRHアナロギ100ng脳槽内投与により、投与後12時間をピークとして肝臓内cAMP含有量の増加が観察された。 今後は、TRHやCRFの脳内の作用部位の特定と特異的抗体・アンタゴニストを用いて内因性TRHおよびCRFの肝生理機能への関与を検討する。
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