研究概要 |
今年度は、微小肝癌治療に先駆け、副作用を軽減する目的で開発された新しいTNF誘導体(F4614)肝癌細胞株に対する抗腫瘍効果をin vitroならびにin vivoで検討した。3種のヒト肝細胞癌株(HuH-7,PLC,Hep-3B)、ヒト胆管細胞癌株(HuCC-T1)、マウス肝癌株(MH134)をTNFまたはF4612の存在下で72時間培養し、増殖抑制をMTT法で、表面抗原(Class-1、HLA-DR、ICAM-1)の発現をFCMで、細胞周期の解析をPI染色で検討した。また、肝癌細胞をマウスの皮下に接種後、5日間連日尾静脈または腫瘍内に5μgのTNFまたは、F4614を投与し、その体積を測定した。 F4614は、TNFと同様にin vitroで肝癌株の増殖を有意に抑制し(10%-52%,p<0.05)、細胞表面のClass-1、ICAM-1の発現量を増加させた。また、F4614の存在下で培養された肝癌細胞は、G2/M期の占める割合が増加し、F4614は細胞がG2期からM期に移行する過程を障害していると推測された。マウスでの抗腫瘍効果の検討では、F4614の静注,腫瘍内投与によりTNF群と同程度に皮下腫瘤の有意な発育抑制を認めた(抑制率:静注群30〜50%,腫瘍内投与群50〜66%),F4614の腫瘍内投与を行なった一部のマウスで腫瘍は完全退縮し,MH134の再投与にて腫瘤を形成しなかった。F4614投与群では、副作用として軽度のcachexiaのみを認めたのに対し、TNF投与群は高度のcachexiaとなりその一部はTNF投与中に死亡した。以上より、この新しいTNF誘導体は肝癌治療に有効であることが示唆された。 今後は、マーカー遺伝子(Lac-Z遺伝子)を組み込んだ培養癌細胞株を用いて我々が開発したマウスの微小癌モデルにおける、F4614の治療効果を検討する予定である。
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