研究概要 |
劇症肝炎においてアポトーシス関連Lewis^Y抗原の発現を免疫組織学的に検討し,正常肝組織,慢性肝炎,肝硬変におけるLewis^Y抗原の発現と比較することで,劇症肝炎における肝細胞死の特徴についての検討を試みた。光顕による観察では,正常肝組織ではLewis^Y抗原は表出せず,慢性肝炎では,そのgradeおよびstageが進行するに伴いLewis^Y抗原の表出は増加した。進行した慢性肝炎および肝硬変では,門脈域周囲の炎症性細胞浸潤部位に残存する肝細胞群においてLewis^Y抗原の強い表出を認め,また偽小葉全体に強い表出を認める部位も存在した。一方,劇症肝炎肝組織では,Lewis^Y抗原は少数の肝細胞群が小管腔を形成するいわゆる偽胆管構造部には強い表出を認めたが、広範に肝細胞が脱落している部位の残存肝細胞には表出を認めなかった。 Fas抗原およびFasリガンドの免疫組織学的検討では,Fas抗原は劇症肝炎組織のうち,広範に肝細胞が脱落している部位に残存する肝細胞の全てに表出していた。また,偽胆管構造が形成されている部位においても,Fas抗原の表出を強く認めた。Fasリガンドについても表出が認められたが,その表出パターンはFas抗原のそれとは若干異なっていた。 以上のことから,劇症肝炎における肝細胞死には,Fas-Fasリガンド系の関与が強く示唆され,またLewis^Y抗原表出パターンの相違から,慢性肝疾患における肝細胞死とは異なる機序が関与する可能性が考えられた。 劇症肝炎肝組織の肝細胞においてFas抗原が表出していることが明らかになったことの意義は大きい。Fas抗原以外のアポトーシス関連蛋白の発現動態もあわせさらなる詳細な検討を行うことにより,劇症肝炎の広範な肝細胞死の成因におけるアポトーシスの関与が明らかになるものと考えられる。
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