研究概要 |
Propionibacterium.acnesとLPSと投与した新生期胸腺摘出マウス、正常マウスの感作脾細胞を新生期胸腺摘出マウス、正常マウスにtransferして肝炎がtransferされるか否か検討した。その結果、donor,recipientとも新生期胸腺摘出マウスの場合58%のrecipientマウスに肝炎がtransferされた。donorあるいはrecipientマウスが正常マウスの場合は肝炎のtransferは認められないか、認められてもごく軽度であった。肝炎の成立にはdonor,recipientとも新生期に胸腺を摘出していることが必要であり、新生期胸腺摘出によるsuppressor機能の低下や、胸腺外分化自己反応性T細胞の増加などが関与していると考えられる。Propionibacterium.acnesとLPSを投与した新生期胸腺摘出マウスの肝内浸潤単核細胞をマウスモノクロナール抗体を反応させてflow cytometryで測定すると、CD4陽性、Vβ4陽性のT細胞が増加していた。これらのことより、Propionibacterium.acnesとLPSによって新生期胸腺摘出マウスに誘導される肝炎はリンパ球を介した細胞性免疫反応による肝障害であり、そのeffector細胞はCD4陽性、Vβ4陽性のT細胞であることが示唆された。 Propionibacterium.acnesとLPSを投与した新生期胸腺摘出肝炎マウスの脾細胞を抗Vβ4抗体と補体で処理し、新生期胸腺摘出マウスにtransferすると肝炎のtransferは全く認められなかった。肝炎をtransferするには新生期胸腺摘出肝炎マウス脾細胞中のVβ4陽性T細胞が必要であることが判明した。 以上のことより、Propionibacterium.acnesとLPSにより新生期胸腺摘出マウスに誘導される実験的肝炎はTリンパ球を介した自己免疫機序の関与する肝炎であり,そのeffector cellはVβ4陽性,CD4陽性のT細胞である可能性が強く示唆された。この結果は抗Vβ4抗体投与による自己免疫性肝炎の特異的な治療法の開発に近ずいたと考えられる。
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