研究概要 |
ストレス蛋白質遺伝子の発現調節機構について 平成7年度では、細胞内のグルタチオンレドックスを介するストレス蛋白質遺伝子転写因子(HSF1)の活性化についての研究を行い、細胞内グルタチオンはストレッサーを関知する細胞内センサーとして働くとともに、HSF1の活性化に関与することを明らかにした(J.Clin.Invest.,1996に発表)。さらに、胃粘膜に安全に、かつ有効にストレス蛋白質を誘導し、ストレス性胃粘膜傷害を予防するといったストレス蛋白質の臨床応用の可能性についても検討した。このため、いくつかの化合物について検討したが、非環状テルペン化合物であるgeranylgeranylacetone(GGA)に注目し、検討した。培養胃粘膜細胞を用いて、GGAはHSF1の活性化を引き起こし、HSP70 mRNAの発現と、ストレス誘導性のストレス蛋白質を誘導することを見いだした。このGGAによるストレス蛋白質の誘導作用については、in vivoでも確認した。ラットにGGAを胃内投与すると、HSP70mRNAの発現とHSP90,HSP70,HSP60の発現を引き起こし、さらに水浸拘束を負荷すると、これらのストレス蛋白質の誘導を増強しストレス潰瘍を抑制した。このように、本所究を通じて、初めて安全なストレス蛋白質誘導剤を初めて報告した(Gastroenterology,1996に発表)。 NF-κBを介したストレス関連遺伝子の発現について 平成7年と8年の研究を通じて、胃粘膜細胞に発現しているNF-κBのコンポーネントと酸化ストレスに関与するコンポーネントの同定を行った。モルモット胃底腺より調整した初代胃粘膜培養細胞を用いて、過酸化水素とジアミドにより活性化されるNF-κBのコンポーネントを、ゲルシフト法、UV-クロスリンク法、免疫沈降法、および免疫組織化学法により検討した。この結果、p50とp65のへテロタイマーが酸化ストレスに反応するコンポーネントであることを明らかにした。さらに、NF-κBの活性化を介した遺伝子発現としてp105と誘導性NO合成酵素のmRNAの発現誘導を明らかにした(論文投稿中)。
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