研究概要 |
HCVの持続感染にLDCの機能障害が関与しているか否かを明らかにする目的で、マウスリンパ性樹状細胞(LDC)にHCV遺伝子を発現させその障害の有無について検討した。 1,C57 BL/6マウスの脾臓からSteinman-Inabaの方法によりLDCを単離し(純度80%以上)これにLacZ遺伝子を組み込んだアデノウイルスべクターAdex1CALacZをmoi100以上で3時間反応させ、X-galで染色することによりその発現を碓認したところ、マウスLDCの80%以上にLacZ遺伝子が導入された。 2,HCV遺伝子(コアーエンべロープ領域)を組み込んだアデノウイルスべクター(Adex1CA327)を用いてLDCにHCV遺伝子を導入し、その発現を抗HCVコア蛋白を用いた免疫染色により確認したところLDCの80%以上にHCV遺伝子が導入された。 3,アデノウイルスべクターを用いてHCV遺伝子を導入したLDCと、ベクターのみのコントロールウイルス(Adex1w1)を反応させたLDCに、異系マウスより単離したTリンパ球を混合培養し(allogenicMLR)、Tリンパ球の[3H]-Thymidineの取り込みによるDNA合成量を測定し、各樹状細胞の抗原提示機能について枚討した。その結果、HCV遺伝子を導入したLDCはAdex1w1と反応させたLDCに比し[3H]-Thymidineの取り込みは有意(p<0.05)に低下していた。また、各LDCにおけるI-A,H-2K,B7-2,ICAM-1の表出の程度をフローサイトメトリーにより比較検討したがこれらの抗原はいずれもその輝度に差を認めなかった。 以上よりHCV遺伝子をLDCで発現することにより樹状細胞機能が傷害されることが明らかとなり、HCVの持続感染にLDCの機能異常が関与していることが示唆された。今後その細胞障害機構について検討する予定である。
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