ヒト肝細胞がん(HCC)は本邦における成人男性悪性腫瘍中第3位の発生率を示す予後不良の疾患であり、現在なお有効な治療法は確率されていない。我々はHCCに対する新たな遺伝子治療法を開発する目的で以下のような検討を行った。HCC細胞の多くは腫瘍特異的にアルファフェトプロテイン(AFP)を高発現していることが知られている。そこでAFP遺伝子プロモーターによって自殺遺伝子であるシトシンデアミナーゼ(CD)遺伝子が発現されるような感染ウイルスを作成し、本ウイルスを感染させることによって腫瘍特異的な細胞死が誘導されることを目指した。まずAFP遺伝子プロモーター、CD遺伝子、cDNAを挿入したレトロウイルスを作成しこれを各種ヒトがん細胞株に感染させた。これら感染細胞株に5-fluorocytosineを投与することによりAFT発現細胞株においてのみ細胞死が誘導されることを明らかにした。したがって本研究計画で開発したAFP-CDE発現ユニットを組み込んだレトロウイルスを用いてヒト肝癌細胞のみを特異的に殺傷可能と思われた。現在Woodehuckラットを用いて本治療法の動物モデルの樹立を目指している。また将来的に臨床応用するさいには、臨床の場でHCC患者に対してルーチンに行われているTAE療法の際に肝動脈よりCD発現ウイルスを投与し、その後経静脈的に5-FCytを投与することで抗腫瘍効果を得ることを目指す。
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