肺小細胞癌細胞培養株に対するグルココルチコイドの増殖抑制効果をMTTアッセイをもちいて検討した。その結果、ハイドロコーチゾンは1mg/mlから10mg/mlで肺小細胞癌細胞株NCI-H82、NCI-H510、NCI-H345、NCI-H2081、N592の増殖を50%以上抑制した。DNAの解析によりハイドロコーチゾンは肺小細胞癌細胞にアポトーシスを誘導していることが確認された。この効果は、グルココルチコイドのレセプター結合阻害剤であるRU38486を1μM添加しても阻害されなかったことから、レセプターを介さない作用が考えられた。この作用の機序とグルココルチコイドレセプターとの関係をさらに明かにするために、グルココルチコイドレセプターmRNAの発現をPCRで検討した。NCI-H510はグルココルチコイドレセプターのmRNAを明らかに発現するが、NCI-H82ではわずかで他の2細胞株では発現はみられなかった。したがって、グルココルチコイドの増殖抑制効果はレセプターを介さないと考えられ、現在、レセプター結合実験によって確認中である。本研究で使用したハイドロコーチゾンの濃度は実際の臨床で、局所的に到達可能な濃度である。すなわち、本研究の結果は、ステロイドレセプターの発現いかんにかかわらず、グルココルチコイドが肺小細胞癌細胞にアポトーシスを誘導することを示し、グルココルチコイドによる肺癌治療の可能性を示している。
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