研究概要 |
Heparinは肥満細胞の顆粒に含まれる陰性電荷ムコ多糖体抗凝固因子として知られているが、近年その抗炎症作用が注目されている。平成7年度までに当研究ではHeparinがPDGFで誘導されるとヒト肺線維芽細胞増殖活性を抑制することをin vitroの系で示した。 そこで本年度はヒト肺線維芽細胞の増殖、遊走およびマトリックスメタプロテアーゼ(MMP)に及ぼすHeparinの作用機序を解明する目的で、その効果を他の陰性電荷ムコ多糖体Heparan sulfateと比較検討し行なった。 確立されたヒト肺胞線維芽細胞株CCL-153を用い、PDGFによる増殖活性を3H-チミジン取り込み能で測定した。また遊走能活性はヒト肺線維芽細胞をコーテングしたトランスウエルチェンバーを用い測定した。さらに培養上清中のマトリックスメタプロテアーゼ(MMP-1,MMP-9)活性を測定し、これらに対するHeparinおよびHeparan sulfateの効果を比較検討し次の結果を得た。 HeparinはPDGFによるヒト肺胞線維芽細胞の増殖、遊走さらにMMP-1,MMP-9の活性を抑制した。一方Heparan sulfateはこれらに影響を及ぼさなかった。これらの結果はHeparinとHeparan sulfateはその作用機序異なること、さらにHeparinが炎症局所でのリモデリングに作用する可能性を示唆した。
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