研究概要 |
この2年間の研究成果としてヒト羊膜を生理的マトリックスとして使用した気道上皮細胞の三次元的培養システムを開発できたこと、上皮面にモルモット気管上皮細胞を生着させ,その対側にモルモット肺実質線維芽細胞を培養しその相互作用を観察できたことが挙げられる。つまり、上皮細胞、線維芽細胞の両者ともにその細胞数が増加し、上皮細胞に関しては線毛上皮・杯細胞への分化が観察された。モルモットから得られた気管の組織像と培養された組織像と酷似しており上皮細胞の増殖分化に間質の線維芽細胞の存在が極めて重要であることが明らかとなった。そこで、上皮細胞の分化に関して得られた上皮の重層化に焦点を絞り検討した。今までに知られている増殖因子が線維芽細胞から放出されて上皮細胞に作用したのではないかと考え、EGF,IGF-1,PDGF,TGFβ,HGF,FGF-2を培養上清に加えどの増殖因子が重層化に関与しているかを検討した。その結果、FGF-2が重層化因子であることを明らかにした。 喘息が難治性に変化するとき、または慢性な経過をとるとき気道のリモデリングが生じるとされる。形態学的には好酸球を主体とした炎症細胞浸潤、気道上皮基底膜の肥厚、杯細胞の増加等である。その際の主役を果たす細胞が気道上皮細胞と考えられており、上皮細胞の増殖分化のメカニズムを明らかにすることは、喘息におけるリモデリング機序を解明していく上で極めて重要な作業と考えられる。
|