研究概要 |
【概要】平成7年度において,29名の肺気腫症患者,6名の慢性気管支炎患者,3名の気管支喘息患者の末梢血マクロファージよりα1-アンチトリプシン遺伝子上流に存在するマクロファージ特異的プロモーター領域をSingle-Strand Conformational Polymorphism (SSCP)法により解析を行った。その結果,3種類の異なる泳動パターンが認められた。しかし各疾患に特異的な泳動パターンは認められず,遺伝的多型性の可能性が示唆された。 平成8年度においては,正常者から得られた最も頻度の高い泳動パターンを示すPCR産物について,自動塩基解析装置を用いて遺伝子配列を決定した。その後,得られたα1-アンチトリプシン遺伝子のマクロファージ特異的プロモーター領域cDNAを,レポーター遺伝子が組み込まれたpGL2-basic vectorに挿入し,マクロファージ特異的プロモーター機能を有するかどうかについて,ヒト肺癌細胞株をコントロールとして組織球由来細胞であるU937細胞株に対しリポフェクション法による遺伝子導入を行うことにより,そのプロモーター活性を測定した。その結果,用いた遺伝子配列はプロモーター活性を有するが,その活性は弱く特異性もはっきりしないことが示された。今後,他の因子による細胞刺激によりこのプロモーター機能がマクロファージ特異的に活性化される可能性について検討を進める予定でいる。 【結論】 (1)α-1-アンチトリプシン遺伝子のマクロファージ特異的発現プロモーター領域の遺伝的多型性の存在が示唆された。 (2)マクロファージ特異的プロモーター領域の遺伝子配列のみでは,そのプロモーター機能は弱く,マクロファージ特異性も示さなかった。 (3)他の因子による細胞刺激により,このプロモーター機能がマクロファージ特異的に活性化される可能性について検討する必要性が示された。
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