研究概要 |
肺癌の2種類のCell line/Ma-1(adenocarcinoma),Ms-1(small cell carcinoma)を用い、既に放射線治療との併用効果が臨床的にも確認されているシスプラチンを対照とし、塩酸イリノテカンの代謝活性体であるSN-38を用い、それぞれの薬剤に細胞を24時間暴露したあと放射線を照射した。各薬剤単剤、放射線単独及び両者の併用の場合について殺細胞効果をMTT assayにより検討し、isobologramにより併用効果を確認した。SN-38は、放射線との併用でMa-1ではadditive effect、Ms-1ではadditive〜supura-additiveの結果が得られた。これは、同一条件で検討を行なったシスプラチンと同等の併用効果であった。併用効果のメカニズムについては、Flocytometerにより検討した.その結果、Ma-1、Ms-1共に併用効果を示す温度のSN-38を作用させるとG2M期への集積を認めた。一方、S-G1期は、横這いないし低下を示した。放射線は細胞周期のG2M期に感受性があることからSN-38と放射線の併用効果の作用メカニズムの一つの説明になると考えられた。これらの成果は、日本癌学会総会(oral presentation#2184,1995)及び1995年度米国臨床癌学会ASCO(American Society of Clinical Oncology,Non-small cell lung cancer session,#1109,1995)のpaster presentationをする機会が与えられ、論文としてまとめた。また、大阪府立羽曳野病院第2内科の高田、田村らとの共同研究を行ない、Ms-1を用いてヌードマウス皮下に腫瘍を作り、それに放射線及び塩酸イリノテカンを投与するin vivoの併用療法の検討を行ない学会発表ならびに論文にまとめた。以上の結果に基づき、我々は、大阪市立総合医療センター呼吸器内科、大阪府立羽曳野病院第2内科との共同研究で塩酸イノリデカンと放射線の同時併用の臨床第1相試験を行なった。26例のIII期非小細胞肺癌を対象とし効果及び副作用を検討した。その結果耐容可能な副作用の範囲内で良好な結果を得られた。その結果は1996年度のASCO(Non-small cell Iung cancer session,#1102,1996)でposter presentationを行い。現在、論文にまとめ投稿中である。1996年度は、さらに、上記臨床試験の結果、放射線肺臓炎が主たる毒性の1つとなったため、93年-96年の塩酸イリノテカンを含め抗癌剤と放射線併用治療の際の肺臓炎について検討し、200cm^2以上、下肺野、塩酸イリノテカンとの同時併用において有意に肺臓炎が発生することを臨床的に明らかにした。この結果は1996年度日本肺癌学会及び、1997年度米国胸部疾患学会に発表し、論文にまとめ投稿中である。
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