研究概要 |
ヒト肺動脈平滑筋細胞(HPASMC)を分離培養し,LPSやサイトカインを作用させることによりプロスタサイクリン(PGI_2)をはじめとするアラキドン酸代謝産物がいかなる変化をするか,またそれらによりPGI_2の産生が高まるとすればその過程に一酸化窒素(NO)が関与していないかを検討した. 1)HPASMCはLPSやIL-1β,TNFαなどのサイトカインと培養することによりNOやPGI_2の産生が有意に増加した. 2)LPSやIL-1β,TNFαをHPASMCに作用させた後,培養上澄をHPLCにて解析すると,LPSやIL-1βはシクロオキシゲナーゼ(COX)代謝産物のみならずリポキシゲナーゼ(LO)代謝産物の産生を亢進させる.一方TNFαはCOX代謝産物の産生を亢進させるがLO代謝産物の産生亢進は明らかでなかった. 3)IL-6はHPASMCのPGI_2産生を抑制し,LPSやサイトカインによるPGI_2産生増幅を強く抑制した. 4)HPASMCをLPSやIL-1βで培養する際NO合成酵素阻害剤であるL-NMMAとともに培養するとPGI_2産生はLPSやIL-1βのみで培養した時と比較してPGI_2産生が有意に減少した. 5)HPASMCをLPSやIL-1βで培養する際NO供与剤であるsodium nitroprusside(SNP)とともに培養するとPGI_2産生はLPSやIL-1βのみで培養した時と比較してPGI_2産生が有意に増加した. 6)これらの結果から以下の可能性が示唆される. (1)ヒト肺動脈平滑筋細胞は内皮細胞と同様にサイトカインやLPSに反応してNOやPGI_2を産生する. (2)NOはヒト肺動脈平滑筋細胞に働いてLPSやサイトカインによるPGI_2産生を更に促進する. (3)肺血管のトーヌスや肺血流の維持に肺動脈平滑筋自身がNOやPG_Sの産生を調節することにより積極的に関与している.
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