研究概要 |
大脳由来のグリア細胞におけるLDL, acetylated LDLのとりこみについて検討した。acetylated LDLの結合および取り込みはmicrogliaで強くみられた。acetylated LDLの結合および取り込みはoligo, O-2A progenitor cell, type 2 astrocyteに軽度にみられた。しかしAc-LDLの結合および取り込みはtype 1 astrocyteにはみられなかった。LDLの細胞への結合、細胞内へのとりこみはOligoやO-2A progenitor cellに強くみられた。astrocyteにも、一部取り込みがみられた。本実験を終了した時点では、このような実験はほとんど報告されていなかったが、1996年,、Christieらにより、アルツハイマー病の老人斑に関連してmacrophage scavenger receptor (MSR)がミクログリアに強く発現していることが報告された。本実験よりScavenger receptorの存在がmicrogliaに強く示唆された。またtype 1 astrocyte以外のグリア細胞にも存在する可能性が示唆され、MSRに対する抗体による検索や、MSR-mRNAの発現の調節についてさらに検討する。またβ amyloid, apoEとの関連も検索を進める。LDLの取り込みは、髄鞘形成細胞であるOligoやその前駆細胞であるO-2A progenitor cellに強くみられ、活発な脂質代謝が推定された。VLDLやapolipoprotein Eとの相互作用についても、今後検討する。ApoEを産生するアストロサイトおよび、その可能性のあるミクログリアについて、サイトカインによるApoE mRNAの発現の調節をマウス大脳由来の培養系にて検索した。ミクログリア:コントロールで、ApoE mRNAの軽度の発現がみられたが、GM-CSF, TGF-βが1日後にupregulateした。IL1-βはdownregulateし、発現が抑制された。アストロサイト: ApoE mRNAはコントロールではみられなかったが、1-3日後にTGF-βによりupregulateされ、IL1-βは1日後には作用がみられなかったが、3日後にはupregulateした。ミクログリアのapoE mRNAの発現の調節:アストロサイトはGM-CSF, TGF-β、IL1-βを産生し、ミクログリアに作用して、上記の反応をおこしうると思われるが、各サイトカインの相互作用の検索も重要となる。アストロサイトのapoE mRNAの発現の調節: TGF-βのapoE mRNAの発現の増強は、TGF-βがapoE mRNAの発現の増強を介してアルツハイマー病の病理発生に関与している可能性を示唆した。
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