研究概要 |
1:研究の概要,実施方法及び経過等: タイラー脳脊髄炎ウイルス(TMEV)はマウスに免疫性脱髄疾患を起しMSの動物実験モデルとされる.共同研究者であるノースウエスタン大学医学部免疫学教室のB.S.Kim教授より供与されたTMEVを感受性マウスの脳内に接種することによりTMEVによる脳脊髄炎を発症させた.ウイルスのB細胞エピトープ領域に相当するアノミ酸配列をもつ合成ペプチドを作製し,この合成ペプチドの感作が疾患にどのような影響を与えるかについて検討した.また脱髄に重要な役割をするとされるサイトカインTNFαに対するモノクローナル抗体,細胞性免疫に影響を与えるとされるガングリオシッドを投与して,脳脊髄炎の症状がどのように変化するかについて検討した. 2.研究成果の概要 B細胞エピトープ感作による抑制実験では,精製ウイルス及びVP1:251-276を感作すると疾患の発症が有意に抑制された.In vitroウイルス中和アッセイでは抗VP1:251-276抗体はウイルスプラックの出現を著しく抑制した.抗TNFαモノクローナル抗体を発症前に投与すると,疾患は著しく抑制された.脊髄浸潤細胞のTNFα産生細胞数と疾患の重篤度は相関した,ガングリオシッドを発症直前より投与すると疾患は抑制された.ウイルスに対する遅延型アレルギー反応,T細胞増殖反応,抗TMEVIgG2a抗体などが抑制されており,Th1細胞がブロックされた疾患発症が抑制された可能性が示唆された. 4研究成果の今後の活用等 1:TMEV精製ウイルス及びVP1:251-276感作により脱髄疾患の発症が抑制されたことより,今後これ以外の他のエピトープの疾患に対する役割を検討していく. 2:抗サイトカイン抗体投与を通じ各種のサイトカイン,及び免疫機構に関与する薬剤を用いて,脱髄疾患への影響を調べ,多発性硬化症の有効な治療法の開発を検討していく.
|