研究概要 |
時間分解能と空間分解能が優れている脳磁図(MEG)を用いて、ヒトの並列的視覚情報処理機構と脳内の視覚情報の流れを非侵襲的に研究し、以下の結果を得た。 1.パターン反転刺激による視覚誘発電位の発生源:主成分のN75,P100,N145の双極子の位置をMEGにより推定した。いづれの双極子も一次視覚野に推定されたが、P100の双極子が最も信頼度が高かった。P100は一次視覚野由来であるという説に矛盾しないが、N145は視覚前野由来とされており、今後検討を行う予定である。 2.大細胞系と小細胞系の並列的視覚情報処理機構:大細胞系(運動視)の刺激のために運動知覚が生じる仮現運動刺激を、小細胞系(色覚と形態視)を刺激するために等輝度の赤緑縦縞格子用いた。仮現運動刺激ではP120、等輝度の赤緑縦縞格子はN120に対する電流双極子が推定された。これらの電流源はパターン反転刺激によるP100と同様に一次視覚野に推定された。今までにこのような研究はなく、一次視覚野内での並列情報処理を証明する結果と考えられる。今後は、視覚前野や視覚連合野での処理過程を研究していく予定である。 3.神経疾患での検討:運動視や色覚障害をきたす神経疾患において、視覚情報処理過程がどのように変化するかを検討する予定であったが、健常人での解析に時間を要し今回は研究できなかった。
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