研究概要 |
過去に報告したHAM剖検中枢神経材料を用いて、免疫組織化学的に各種細胞接着因子の発現を定量的に検討した。用いたモノクローナル抗体は、ICAM-1,VCAM-1,ELAM-1,LFA-1,Mac-1,Sialyl-Lewis^<X,> VLA-4,Monocyte Chemoattractant Protein-1(MCP-1)に対する抗体で、Avidin-Alkaline phosphatase法を用いた。対照として、他の神経疾患及び非神経疾患の凍結脊髄標本を用いた。研究費の一部は、各種モノクローナル抗体などの購入に当てた。 結果:HAM脊髄では、血管内皮細胞にVCAM-1が発現しており、対照では陰性であった。ICAM-1は、HAM,対照で同程度に強く発現しており、明らかな差は認められなかった、ELAM-1はHAMの一部で血管内皮に発現していた。一方、VLA-4は、血管周囲の浸潤単核球表面に発現していたが、脊髄実質に浸潤している細胞には発現していなかった。LFA-1,Mac-1は脊髄髄膜、血管周囲及び実質内の浸潤単核球に強く発現していた。Mac-1は脊髄実質内のグリア様細胞(マイクログリア)にも発現が見られた。対照では、これらの発現は認められなかった。MCP-1は活動性炎症巣の血管周囲の浸潤単核球及び血管内皮細胞に発現していた。 考察:VLA-4/VCAM-1は、実験的自己免疫性脳脊髄炎やHIV脳症において、リンパ球が血管内から、中枢神経実質内に浸潤する際に重要な接着因子と考えられており、HAMにおいてもこれらの接着因子は関与している可能性が初めて示された。MCP-1は、単球、リンパ球のキモカインとして重要であり、慢性炎症、腫瘍、動脈硬化などに関与していることが報告されているが、HAMにおいても、リンパ球、単球/マクロファージの脊髄への遊走因子として重要であることを確認した。 今後、更にIn situ Hybridizationにより、これらの接着因子のmRNAの発現を検討する予定であり、試薬の購入のために、研究費を使用する予定である。
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