研究概要 |
虚血性脳血管障害(ICVD)患者においてフローサイトメトリー(FC)により血小板フィブリノーゲン(Fbg)結合陽性率と血小板P-セレクチン発現陽性率を測定した。ICVD患者とICVD以外の神経疾患よりなる患者対照から採取したクエン酸Na加静脈血にFITC標識抗Fbg抗体またはPE標識抗P-セレクチン(PS)抗体を反応させ、パラホルムアルデヒドで固定し、FCにより対数前方散乱と対数側方散乱から血小板集団を同定し、血小板5,000個について対数蛍光強度のヒストグラムを描出し、FITCまたはPE標識IgGを用いた陰性対照から陽性部分を設定して全血小板に占めるFbg結合血小板とPS発現血小板の比率を算定した。 血小板Fbg結合陽性率は対照群に比しアテローム血栓性梗塞(AT)群、心原性脳塞栓症群、ラクナ梗塞群、TIA群でいずれも高値を示したが、AT群ではラクナ梗塞群と比べても有意に高率であり、抗血小板薬投与群で抗血小板薬無投与群より有意に低率であった。また、血小板PS発現陽性率はAT群でのみ対照群より有意に高率であった。血小板Fbg結合陽性率と血小板PS発現陽性率はADP、アラキドン酸、血小板活性化因子惹起血小板凝集能のいずれとも有意な相関を示さなかった。in vitroにおいて、血小板Fbg結合は生理的範囲でのFbgの変動による影響を受けず、PGI2誘導体やFbg受容体拮抗薬により抑制された。 以上の結果より、FCによる血小板Fbg結合陽性率と血小板PS発現性率の測定はICVD患者において血小板凝集能よりも生体内での血小板活性化を反映し、感度と特異生に優れた活性化血小板検出法であり、抗血小板療法の適応決定や効果判定に有用であると考えられた。
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