研究概要 |
われわらは,最近Dahl食塩感受性ラットが高頻度に心,腎傷害を惹起して高血圧臓器傷害のモデルラットとして有用性であることを報告した(Uehara et al:J Cardiovasc Pharmacol 1994;23:970,Ishimitsu et al:Hypertension 1994;23:68)。本モデルでは,腎,心臓でのコラーゲン量が増加し(Uehara et al:J Cardiovasc Pharmacol 1994;23:970),左心室でのコラーゲン繊維の増加は全身血圧と関連があり、一方右心室のコラーゲン繊維の増加は腎臓障害の程度と関係すること,さらに心腎障害に共通する体液性障害因子が存在する可能性を見いだした(第4回Dahlラット研究会,New York,1995)。腎障害ラットでは分子量1万以下の血漿分画に腎メザンジウム細胞のコラーゲン産生を促進する因子活性が存在することを確認した(第38回日本腎臓学会総会発表,千葉,1995)。本因子は既知のコラーゲン産生刺激因子とは分子量および特性上に違いがあり、今までに報告されていない新たなコラーゲン産生促進因子であると考えられる。5/6腎摘出腎傷害ラット血清をgel-permeationHPLCにて分離精製したところ、分子量1万と0.5万に一致して、それぞれコラーゲン産生促進因子と抑制因子が存在することが明らかになった。コラーゲン産生促進因子はメザンジウム細胞の増殖には影響を与えなかった。また、本因子活性の増大は、腎臓傷害の程度と関連することも観察しており、in vivoにおいても病態生理的な意義を有することが確認された。現在、モノクローナル抗体の作成を試みており、本障害因子の測定系を確立することを目指している。
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