研究概要 |
近年,先行する単時間の心筋虚血(ischemic preconditioning)によって心筋梗塞範囲が著しく減小することが知られており,それに関与する因子として,アデノシン,ATP感受性カリウムチャンネル,protein kinase C等が報告されている.すでに当教室では三浦らがischemic preconditioningにより心筋内norepinephrine放出が抑制されることを報告し(第14回 ヨーロッパ心臓病学会)そのメカニズムにATP感受性カリウムチャンネルの関与があることを証明し(Circ Res,投稿中),ischemic preconditioningが引き起こす多彩な細胞内代謝の変化に注目してきた.しかし現在までischemic preconditioningによる心筋保護作用の本体には不明な点が多い. そこで,ischemic preconditioningが心筋小胞体カルシウム放出チャンネル(ryanodine receptor)および筋小胞体Ca-ATPaseの活性にどのような影響をおよぼすか検討しischemic preconditioningのメカニズムにSRからのカルシウム放出能の変化が関係しているかを検討した.その結果,ischemic preconditioningによりryanodine receptorが有意に温存されることを証明した(第60回日本循環器病学会に発表予定)。また虚血再灌流時には再灌流後12-24時間をピークとする炎症性サイトカインの発現が見られることが報告されているが,その中でもTNF-αの増加は心筋のnecrosisやapoptosisを促進し,遅延性の心筋障害を惹起する可能性がある.そこで虚血再灌流モデルにおいて,TNF-αの発現時期,発現部位と虚血領域との関係をまず検討し,ischemic preconditioningがTNF-αの発現にどのような影響を及ぼすか免疫染色法を用いて検討すると共に,心筋内で生じるapoptosisについて検討した(第60回日本循環器病学会に発表予定)。
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