研究概要 |
労作性および冠攣縮性狭心症患者の頸動脈洞の伸展度と頸動脈洞反射の関連を検討し、頸動脈の動脈硬化が虚血性心疾患における自律神経活動に及ぼす影響について検討した。方法は、冠状動脈造影検査前に大腿動脈より左総頸動脈にカテーテルを留置し、血圧と心電図を同時に連続記録する。そしてphenylephrineを注入し血圧および心拍数の変動よりbaroreceptor sensitivityを求め、7.5MHzプローベにて頸動脈エコーを同時記録し、頸動脈硬化度を評価した。全症例においてPhenylephrine投与により求めた頸動脈洞伸展度はbaroreceptor sensitivitykr=0.67(p<0.01)の有意な正相関を認めた。労作性狭心症群(EFAP)と冠攣縮性狭心症群(VSAP)に分けて検討すると、EFAP群において頸動脈プラーク数は有意に多く(EFAP : 0, VSAP : 1.0±0.5, p<0.05)、baroreceptor sensitivity(EFAP : 2.2±0.8msec/mmHg, VSAP : 10.5±2.8msec/mmHg, p<0.01)およびphenylephrine投与時頸動脈伸展度(EFAP : 0.18±0.11 Kpa%, VSAP : 0.55±0.21Kpa%, p<0.01)は有意に低かった。ゆえに、労作性狭心症症例では、頸動脈洞反射感度の低下の機序の一部に頸動脈動脈硬化に伴う頸動脈洞伸展性の低下が関与することが示唆された。虚血性心疾患の致死性不整脈発症に自律神経機能不全が関与することが報告されているが、今回の検討より、虚血性心疾患に対して頸動脈洞エコーにより頸動脈洞硬化度を評価することは、虚血性心疾患における自律神経機能不全の評価において有用であることが示唆された。現在、心不全や心筋梗塞症例の予後にアンギオテンシン転換酵素遺伝子の多型性の差が関与することが示唆されており、今後これらの観点からも検討する予定である。
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