研究概要 |
心筋細胞自信より分泌されるペプタイド成長因子であるbasic Fibroblast Growth Factor (bFGF)、Transforming Growth Factor (TGF)β1の心肥大における役割とその相互作用の解明を、細胞外基質と接着分子の発現から検討する。【方法】培養心筋にnorepinephrine (NE), angiotensin II (A II), phorbol ester (PMA)、bFGFを投与し、bFGFとTGFβ1の発現を酸素抗体法による染色およびwestern blottingにて検討した。また細胞外基質であるラミニン(LM)、ファイブロネクチン(FN)、β1 Integrin (IN)の発現を検討した。【結果】controlの培養心筋細胞ではbFGF、TGFβ1の発現は軽度であり、NE, A II, PMAによる肥大細胞ではcontrolと比し、明かなbFGF、TGFβ1の発現の増加を示した。内因性bFGFによる肥大反応ではTGFβ1の発現の増加を示した。特に細胞質内に顆粒状のTGFβ1染色が増加すると共に核周囲の染色性の増強を認めた。western blottingにてもbFGF、TGFβ1は各刺激物質投与により発現の増強を認めた。細胞外基質であるLM、FNはcontrolにおいて胞体および細胞周囲に染色され、NE, PMA, bFGF投与によりその染色性が増強した。INではLM、FNに比しその染色性は弱く、controlではほとんど染色されなかった。しかしNE, PMA刺激により細胞周囲に強く染色性を示した。【考察】培養心筋での心筋細胞肥大にはbFGFのみならずTGFβ1の発現増強を認めた。このTGFβ1の発現増強は内因性bFGFで刺激した肥大細胞にも認められ、心肥大に伴う2次的な作用であると考えられた。さらにこれらの肥大細胞では細胞外基質であるLM、FN、INの発現増強も認められた。各肥大刺激による細胞形態は異なり、肥大様式の相違がこれらの細胞外基質の発現を規定しているものであると推測した。またTGFβ1は細胞外基質の強力な促進因子であり、細胞外基質の増強はTGFβ1の産生により惹起されたものと推測された。
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