研究概要 |
IgA腎症患者血清のヘパリンアフィニティーカラム(HC)溶出物には正常者と異なるフィプロネクチン(FN)断片化物が特にC-末端を認識するモノクロナール抗体で約43kdの位置に検出されることを示してきた.この断片化物がIgAと結合性を示すことが本研究の重要な課題であった.今回,この断片化物は確かにIgAとの結合性を有することが示され,IgA腎症におけるIgA沈着機序の新しい考え方として提唱しうるように思われる. 1 平成7年度の検討は,(1)HC処理IgA腎症患者血清,ニトロセルロース膜に固相化したカテプシンD処理断片化FNに対するIgAの結合性,および(2)IgA1-カラム結合性FN断片化物の性状について行った.その結果,IgAの結合は約60kdの泳動帯のみにみられ,酵素処理断片化FNへの結合位置と類似していたが,抗体による同一性の証明はできなかった.酵素処理FNのIgA1-カラム溶出物は極めて微量で分析には不適であった.そこで,(3)IgA-親和性担体であるjacalin-agarose(J)を用いて血清を処理,結合したIgAを介して結合するFNを抗体で検出することを試みた.その結果,FNが検出されたが,FN単独による背景反応により目的とする断片化物は示されなかった. 2 平成8年度は,血清内断片化物とIgAとの反応性のモデルとして,精製IgA1と酵素処理FNを試験管内で混合,孵置,ついでJと反応させ,IgAと共に結合するFN断片化物を上述と同様にモノクロナール抗体により解析した.その結果,患者で示された約43kdのC-末端を含む断片化物は,IgAを強く結合することが示された.FNのC-末端は細胞外基質の会合に重要な役割を果たしていることが知られており,これがIgAとの結合性を有することはこれまで未知であったIgA沈着機序の考え方として興味ある所見である.
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