研究概要 |
1.培養ウシ糸球体内皮細胞におけるNF-_kBの活性化機序について以下の結果を得た. NF-_kB活性はTNF-αにより著明に増強し,NF-_kBに対する抗体を用いた検討からおもにp50/p65ヘテロダイマーの活性化が示された.TNF-αによるNF-_kB活性化にはprotein kinase Cの経路は関与せず,NF-_kB活性化にはtyrosine kinaseの経路が重要であると考えられた.また,抗酸化剤による著明な抑制から細胞内酸化還元反応による調節機序が示唆され,さらに,c-jun/AP-1阻害剤による抑制および抗Jun抗体によるNF-_kB活性の減少からNF-_kB活性化におけるAP-1の関与が推測された.AP-1活性の検討では,抗Jun抗体のみならず抗NF-_kBp65抗体の処理によっても減少することから,NF-_kBp65とJunの転写活性における蛋白-蛋白相互作用が示唆された. 2.培養ウシ糸球体内皮細胞におけるMCP-1遺伝子発現におけるNF-_kBの役割について以下の結果を得た. 蛋白キナーゼ阻害剤を用いた検討では,NF-_kB活性化はStaurosporine,H-7によりまったく影響を受けずprotein kinase Cは関与しないという結果であったが,tyrosine kinase阻害剤であるherbimycin Aにより著明に抑制されtyrosine kinaseの関与が示された.一方,MCP-1遺伝子発現はprotein kinase C阻害剤であるstaurosporineにより部分的に抑制され,またNF-_kB活性化には効果を示さなかったgenisteinにより著明に抑制され,NF-_kB活性化とは異なる経路が関与するという結果であった.このことからはMCP-1遺伝子発現にはNF-_kBの関与が少ないということが考えられ,AP-1活性化における検討結果(すなわちstaurosporineとgenisteinの両者がAP-1活性化を抑制する)からはAP-1がMCP-1遺伝子発現に関与する転写因子であるということが考えられた.しかし,NF-_kB阻害剤であるPDTCとc-jun/AP-1阻害剤であるcurcuminの両者がともにMCP-1遺伝子発現を抑制したという結果は,NF-_kBとAP-1の両者がMCP-1遺伝子発現に必要であることを示す.このようなMCP-1遺伝子発現における複雑な結果は,前述したNF-_kBとAP-1がお互いにそれぞれの転写活性に影響を与えるという結果に関連するかもしれない.すなわちMCP-1遺伝子発現には二つ以上の転写因子が関与し複雑な転写調節機構が存在するものと考えられた.
|