研究概要 |
平成7年度に実施した研究を以下に示す。 1.培養ヒトメサンギウム細胞を用いて、[^3H]thymidineの取り込みに対するLPS,TNF-α,IFN-γ,M-CSF,db-cAMP,anti-Fasの影響を検討した。LPS,IFN-γ,db-cAMPは濃度依存性に[^3H]thymidineの取り込みを抑制した。TNF-α,anti-Fasも[^3H]thymidineの取り込みを抑制したが軽度であり、濃度依存性は認められなかった。一方M-CSFは[^3H]thymidineの取り込みに全く影響を与えず、DNA合成に対する促進効果はなかった。 2.培養ヒトメサンギウム細胞を用いて、M-CSFの産生能をEIAにて検討した。無刺激では48時間までM-CSFは産生されなかったがIFN-γ,LPSでは濃度依存性に産生が亢進した。LPSにIndomethacinを添加することによりM-CSFの産生がさらに亢進することから、M-CSFの産生はProstaglandinsにより抑制的な調節を受けていることが示唆された。TNF-αによるM-CSFの産生はIFN-γ、LPSに比べると低値であったが濃度依存性に増加した。TNF-αによるM-CSFの産生もLPS同様Prostaglandinsにより抑制的な調節を受けていることが示唆された。 3.以上のM-CSFの産生がmRNAレベルでどのような調節を受けているのかを検討する目的でNorthern blottingを行った。無刺激の状態ではM-CSF mRNAの発現は認められなかったがLPS,TNF-αを加えることによりM-CSF mRNAの発現が増加した。LPSにIndomethacinを添加することによりM-CSF mRNAの発現がさらに増強したことからM-CSF mRNAの発現は転写レベルでProstaglandinsにより抑制的に調節されていることが示唆された。 4.今後は同様の検討をIL-6,IL-8,MCAFについても行う予定である。また小児慢性腎炎患者の腎生検標本についても上記サイトカインの発現を検討し、遊走細胞、メサンギウム増殖、臨床所見との相関を検討する予定である。
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