研究概要 |
エンドトキシンすなわちリポ多糖類(LPS)は多岐にわたる生物活性を有している。その細胞はマクロファージのみならず,好中球・内皮細胞に及ぶ。これらの細胞の活性化にはCD14分子が深く関与している。本研究では好中球のプライミングが血清存在下ではCD14分子を介して行われる他,内皮細胞のLPSによるICAM-1の発現増強にも血清の存在が重要なことが判明した。好中球は,TNF-αまたはLPS+血清の処理を受けた内皮細胞との接着により活性酸素の産生を生じた。これらの系において抗CD18抗体により接着・活性酸素産生は抑制された。これらの実験により細胞間の接着が情報伝達のtriggerになることが推測された。同じく接着分子の抗体である抗CD11b抗体は接着を抑制すると同時に,活性酸素産生を亢進させ,細胞間接着の情報伝達系がCD18ではなくCD11b分子を介して行われることが示唆された。本実験系においてTNFに依存する程度は軽微であった。 エンドトキシンショックの病態には好中球由来の活性酸素が深く関与しており,好中球機能の過剰な機能亢進は組織障害をもたらすと予測される。この過程においてひとつの調節機構として好中球アポトーシスを考慮した。実際炎症性サイトカインとして知られるGM-CSFはG-CSFと比較して高度に好中球の寿命を延長し,機能の亢進を長時間もたらした。この点においてもGM-CSFの臨床応用の困難性が予測される。 ベーチェット病において,好中球機能の亢進が証明され病態に関与すると考えられる。脳循環改善薬として知られるペントキシフィリンは,in vitroにおいて好中球機能を抑制することからHLA-B51陽性の活動性患者に本剤を投与し好中球機能の改善と症状の寛解を認めた。
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