研究概要 |
研究者らは,ラット新生仔の低酸素/再酸素化モデルを用いて,これらの負荷によって線条件でのドパミンの遊離が増大することを報告した.これらドパミンの蓄積は,その代謝過程で生じるO_2やOHといった活性酸素などにより神経障害的に働くことが知られている.さらに過剰に産生されたNOとドパミンが共役することでラジカルによる障害作用が増強される可能性がある.我々はさらに,低酸素負荷に伴う線条体でのドパミンの動態の変化におけるNOの役割について日齢7のラット新生仔を用いて検討した.低酸素負荷とそれに加えてNO合成基質であるL-アルギニンやNOS阻害剤であるN^G-nitro-L-arginine-methylester (L-NAME)のドパミンの動態に対する効果を,マイクロダイアリシス法を用い線条体の細胞外液のドパミンとその代謝産物の濃度を経時的に測定することにより検討した.60分の8%低酸素負荷により細胞外ドパミン濃度は負荷前の平均241%にまで増加するが,L-NAMEの投与は前値の平均142%と有意に増加が抑制された.また,高濃度のカリウムによる脱分極刺激で放出されるドパミンの細胞外濃度も対象群では前値の平均1410%まで増加するが,L-NAMEの投与によりその増加は603%までに抑制された.これらの結果より、低酸素負荷に伴う細胞外ドパミンの増加には少なくとも一部にはNOが関与していて,NOS阻害剤の投与はこのドパミンの遊離を抑制する効果によっても細胞障害に保護的に働きうると考えられた.
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