研究概要 |
我々は,アレルギー性および炎症性疾患において,重要な化学伝達物質であるロイコトリエンC4(LTC4)およびLTB4の産生が,アラキドン酸(AA)の切り出したら開始される3ステップ(steps)の4つの合成酵素(phosholipase A2,5-lipoxygenase,LTC4 synthase,LTA4 hydrorase)に対する種々の制御機構によって調節されているという仮説を提唱している.この仮説をアレルギー疾患で即時型反応に関与した肥満細胞のモデル細胞であるRBL細胞を使用し検討した.その結果,活性ビタミンAであるレチノイン酸に強力なLTC4合成酵素蛋白の選択的誘導作用があることを見いだし報告した.また,その誘導はグルココルチコイドのひとつであるデキサメサゾンにより制御されることを明らかにした.すなわちLTC4合成酵素の選択的な蛋白レベルでの調節機構が存在することをはじめて証明した.更に cytosolic PLA2,5-lipoxygenase,LTC4 synthaseのmRNAの発現をNorthern blotting法を用いて解析したところ,mRNAレベルでの制御ではなく,post-transcriptionalな制御が存在することが示唆された. また,種々の免疫抑制作用を有する物質や抗アレルギー作用を示す物質(FK506,サイクロスポリン,アゼラスチン,ホノキオール,漢方製剤)により,これらのAA代謝系酵素がどのような機序で調節をうけるかどうかについても検討した.FK506,サイクロスポリン,アゼラスチン,ホノキオール,漢方製剤いずれもLTC4とLTB4の産生を抑制することが判明した.しかし,その抑制の詳しい機序に関しては,薬剤により異なっており,さらに詳しく検討する必要がある.
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