研究概要 |
乳幼児期のRSV感染の病態形成における種々の炎症性,免疫調節性サイトカインの関与,およびその誘導の機序について検討した. 1)発病数日以内のRSVの感染局所(鼻咽腔分泌物)に,かなり高いIL-6,TNF-α活性を検出できたが,このことはそれらが,病態形成あるいは回復過程に関与していることを示唆している.また,乳児期前半とそれ以降の児とでは,IL-6活性の消長に違いが見られたことから,その誘導の機序は一様ではないと考えられた.IL-6のIgA分泌の促進作用は,今回,RSV特異IgA抗体との関係では明らかにできなかった. 2)新生児の単球-マクロファージ系細胞にRSVを感染させる系を作成し,サイトカイン誘導の機序について更に検討した.新生児の細胞においても,RSV感染に際し成人の細胞と同様に,良好にIL-6やTNF-αの分泌がなされることを確認できたが,新生児の細胞においては,感染が早く進行すること,そのためにIL-6の産生も早期に終了した.また,不活化RSVに対するIL-6の産生も成人に比して低かった.これらは,乳児期のマクロファージの機能の未熟性を示すと考えられた. 3)続いてIL-1β,IL-12,IFN-γなど他の免疫調節性サイトカインの誘導についても同様に検討した.IL-12,IFN-γなどは,RSV刺激により、mRNAの発現増強が明らかなのにかかわらず,サイトカイン蛋白の産生はほとんどおきておらず,メッセージの翻訳以後の問題と考えられた.いずれにしても,IL-6,TNF-αなどの炎症性サイトカインが速やかに誘導されること,また,IL-12,IFN-γなどの免疫調節性サイトカインの誘導が不完全であることが示されたが,このことが乳児期早期のRSV感染の病像形成に関係している可能性がある.
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