研究概要 |
平成8年度は前年度にひきつづき非血縁臍帯血幹細胞移植の臨床応用に向けて,臍帯血の採取,保存を行った.神奈川内の数施設と神奈川臍帯血バンクを設立し現在までに150の臍帯血の保存を行っている.さらに平成9年2月28日に当教室において,我が国において初めての非血縁臍帯血幹細胞移植を施行した.対象は初診時8ヶ月の女児で,診断は急性骨髄性白血病(FAB分類M6)である.化学療法に対する反応が悪く予後不良と考えられたため,同種造血幹細胞移植の絶対適応と考えたが血縁および骨髄バンクにてもドナーが得られず,神奈川臍帯血バンクHLA1抗原のみ不一致の臍帯血が2例得られた.非血縁臍帯血幹細胞移植は米国を中心として200例以上が施行されており,臍帯血のHLA1抗原不一致は骨髄の6抗原一致に相当するとされている.この2例のうち幹細胞数の多い例を選んで,当医学部の倫理委員会の承認を得た上で移植を施行した.この臍帯血は細菌,真菌およびウイルスの感染を認めなかった.また臍帯血を提供した男児は移植の時点で生後1年を経過しており,先天性疾患は認めず順調に発育している.現在移植後2週間であるが順調に経過している. 基礎的検討は臍帯血中の造血幹細胞のex vivoでの増幅について,造血細胞の長期培養系であるlong-term culture initiating cell(LTC-IC)の系を用いて10例について検討した.この結果培養開始5週までex vivoにおいて造血幹細胞存在が確認された.
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