研究概要 |
対象は、心臓カテーテル検査を施行した先天性心疾患患児50例(平成7年度:19例、平成8年度:31例)である。予定していた肺静脈における採血は困難な症例もあり左心室での採血に変更した。主肺動脈・左室で採血した検体の血漿ET-1およびNOxと血行動態因子との関係を検討した。平均肺動脈圧20mmHg以上の例を肺高血圧群(PH群)、それ以下の例を非肺高血圧群(non-PH群)とした。1)血漿ET-1,NOx値は何れも採取部位による差はなかった。2)PH群19例、non-PH群31例について、血漿NOxはPH群で2.41【.+-。】1.13ppm、non-PH群で1.56【.+-。】0.71ppm、血漿ET-1はPH群で3.36【.+-。】2.08pg/ml、non-PH群で1.94【.+-。】0.81pg/mlであった。血漿ET-1、NOxはPH群でnon-PH群に比し有意に高値であった(p<0.01)。3)肺動脈圧と血漿ET-1,NOxは正の相関関係を示した。平均肺動脈圧は血漿ET-1とはr=0.403、NOxとはr=0.42であり、体肺動脈圧比は血漿ET-1とはr=0.55,NOxとはr=0.43であった(p<0.01)。4)PH群について検討した。血漿NOxは、肺血管抵抗と有意の相関関係を示した(r=0.55,p<0.05)が血漿ET-1と肺血管抵抗との相関はみられなかった。血漿ET-1は,肺体血流比と有意に相関していたが(r=0.68,p<0.01)、血漿NOxと肺体血流比との相関はみられなかった。5)心疾患根治術術後の10例について検討した。このうちPH群、non-PH群は各々5例であった。PH群ではnon-PH群に比し有意に血漿NOx値が高値であったが(PH群;3.05【.+-。】1.32ppm,non-PH群;1.4【.+-。】0.64ppm、p<0.05)血漿ET-1については有意差はなかった。 (考察)先天性心疾患による肺高血圧においては,血管作動性物質であるET-1およびNOは何れも産生の亢進がみられる.しかし,その分泌刺激機転は同じではなく,ET-1は肺血流量の増加によって、NOは肺血管抵抗の増加によって産生分泌を刺激されるのではないかと推察される。
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