研究概要 |
先天性色素性-母斑、悪性黒色腫原発巣、悪性黒色腫転移巣、および悪性黒色腫培養細胞のガングリオシド組成、スルファチド組成を明らかにするために、それぞれ9例、5例、12例、10例について生化学的に検討した。 ガングリオシド組成としては、先天性色素性母斑ではすべての検体で常に一定で、GM3>GD3であった。一方、悪性黒色腫においては、手術材料と培養細胞の間、および検体間で組成は大きく異なり多様性を示した。 スルファチド組成としては、先天性色素性母斑および悪性黒色腫原発巣において、ガラクトシルセラミド-3-硫酸が認められたが、悪性黒色腫転移巣および培養細胞においては検出されなかった。 悪性黒色腫培養細胞において、インターフェロンβ(IFNβ)および腫瘍壊死因子α(TNFα)のガングリオシド組成、スルファチド組成に及ぼす影響を5つのcell lineを用いて検討した。TNFαは悪性黒色腫培養細胞のガングリオシド量全体を減少させた。一方、スルファチドについては、未処理の培養細胞では検出不能であったが、TNFα処理後に出現をみた。色素性母斑および悪性黒色腫原発巣において存在したスルファチドが、悪性黒色腫転移巣およびその培養細胞で消失し、さらにTNFα処理により誘導されるという現象は、スルファチドが接着分子L-,P-セレクチンのリガンドであることを考え合わせると、悪性黒色腫の転移能との関連で注目された。
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