研究概要 |
悪性黒色腫,皮膚悪性リンパ腫では,他の悪性腫瘍では高頻度に見られる癌抑制遺伝子のp15,p16,p53の欠損や変異はPCR法,PCR-SSCP法では認められなかった.しかし,免疫組織化学法では,有棘細胞癌に高頻度にp53の発現が認められ,日光角化症でも高頻度にp53の発現が認められた.すなわち,有棘細胞癌ではその前癌段階である日光角化症ですでに,p53の遺伝子異常が認められた.実際,日光角化症で高頻度にp53の発現が認められた2例では,その後有棘細胞癌のリンパ節転移が早期に確認され,予後も不良であった.このことは,日光角化症でもp53の発現が強い症例では、十分な治療が必要であることを示唆し,今後の治療方針を決定する上で有用な所見といえた. 近年,悪性黒色腫や,皮膚悪性リンパ腫にインターフェロン療法が行われ,治療効果が得られている.このインターフェロン療法による効果の多くは免疫活性作用によるものと考えられてきた.しかし,本研究ではインターフェロンによる抗腫瘍効果が,腫瘍に対する直接作用も存在することを明らかとした.すなわち,インターフェロンによる細胞増殖抑制活性がp53を経由しないp21の活性化と,IRF-1の活性化を通じてのアポトーシスの誘導によるものであることを明らかにした.また,このインターフェロンゃインターロイキン1による増殖抑制効果はp15,p16,p73に欠損のあるA375-2悪性黒色腫細胞株では強く見られ,今後癌治療を考案する上で有用な所見と考えられた.また,インターフェロンによる増殖抑制効果がステロイドの併用により増強されることも証明した.
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