研究概要 |
in vitroの培養角化細胞に対する機械的傷害、紫外線照射の影響 培養したヒト角化細胞(ケラチノサイト)に機械的傷害、紫外線照射(UVB)を行ってエンドセリン(ET-1)とその受容体(ETA,ETB)のmRNAの発現の変化を調べた。UVB照射ではいずれのmRNAの発現量も著明に増加し、エンドセリンの炎症性サイトカインとしての働きが示唆され、紫外線照射時の色素沈着や組織修復に関与していることが考察された(FEBS Lett,文献参照)。 in vitroの創傷収縮モデルにおけるエンドセリンの役割 コラーゲンゲルの中にヒト線維芽細胞を植え込み、表面にケラチノサイトをまきskin equivalentを作製した。これにエンドセリンを添加してゲルの収縮面積を測定した。エンドセリンは低濃度で強力にゲル収縮を促進し、エンドセリンレセプター拮抗剤による前処理はこれを抑制した。またケラチノサイトと線維芽細胞のco-cultureではmono-cultureよりも収縮が大きく、相互作用が考えられた。(Exp Cell Res投稿中) 動物モデルにおけるエンドセリンの創傷治癒促進効果の検討 正常家兎の耳介内側に直径6mmの全層皮膚欠損創を作製し、異なる濃度のエンドセリンを添加し、フィルムで覆って閉鎖創とした。いずれの濃度でもエンドセリンは創傷治療における再上皮化を促進したが、その効果は1.0μg/siteで最大であった。肉芽組織や血管数に対する作用は実験によりばらつきがあったが、エンドセリンを投与すると創の幅が縮小する傾向が認められた(Am J Patholに投稿予定)。 糖尿病マウス皮膚欠損モデルを用いた精製白糖ポビドンヨード製剤の創傷治癒促進効果の検討 糖尿病マウス背部皮膚に全層皮膚欠損創を2個作製し、精製白糖ポビドンヨード製剤を充填して開放創とした。実験の結果、基剤投与群、無処置群に比較して精製白糖ポビドンヨード製剤を投与した群では再上皮化、肉芽組織、血管数とも有意に増加していた。(日皮会誌、文献参照) in vitroの創傷収縮モデルにおけるIGF-Iの役割 コラーゲンゲルの中にヒト線維芽細胞を植え込み、これにinsulin-like growth factor(IGF-I)を添加してゲルの収縮面積を測定した。IGF-Iは高濃度でもわずかにしかゲル収縮を促進しなかったが、その結合蛋白IGFBP-Iとともに添加すると、ゲル収縮は著明に促進した。この収縮は6時間後から認められ、IGF-I受容体の抗体を添加することにより抑制された。(Endocrinology 文献参照)IGF-IとIGFBP-Iの動物モデルでの創傷治癒促進効果はすでに報告した(J Invest Dermatol,文献参照)。
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