研究概要 |
2つの放射線感受性の異なる細胞株を用いて,照射による早期細胞死に関する基礎的な検討を行い,間期死の機序を解明するとともにアポトーシスと間期死との関連について解析するとともに,両細胞の薬剤感受性ならびに温熱感受性についても比較検討し,つぎの結論をえた. 1.放射線感受性は照射後早期に出現するアポトーシスの多寡と関連しており,放射線誘導アポトーシスが細胞の放射線感受性の指標となるとの結論をえた. 2.アポトーシスを誘導する線量には,saturation doseがあるものと考えられた.また,in vivoの系では,アポトーシスの出現のピークは照射後6時間であるのに対して,in vitroの系では,培養液中に処理されることなく蓄積するためか,照射後6時間よりは遅れていた.放射線抵抗株であるNMT-1R細胞では照射後24時間経過してはじめて有意にDNA断片化率が増加することから,分裂を介したアポトーシスの誘導の可能性が示唆された. 3.放射線感受性株であるNMT-1細胞は放射線抵抗株であるNMT-1R細胞と比較して,シスプラチンに対する感受性がID_<50>ならびにDoいずれの指標をとっても約4倍高かった.6時間の範囲では照射との併用時期に関係なく両細胞株ともにシスプラチンによる相乗的な放射線増感効果が認められた. 4.放射線感受性株であるNMT-1細胞の熱感受性は放射線抵抗性株であるNMT-1R細胞に比較して低く,42°Cでの加温時間-生残率曲線上のToはそれぞれ2.5時間ならびに0.7時間であった.またNMT-1細胞では,熱処理によりHeat Shock Protein 70が産生され,NMT-1R細胞に比較して明らかな熱耐性が誘導された.また,熱処理によっては,両細胞ともにアポトーシスは誘導されなかった.
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