研究概要 |
乳癌、前立腺癌は早期に骨転移を認めても患者の平均余命は比較的長い。従って、骨転移に起因する疼痛を効果的に軽減することは生活の質を維持するのに極めて重要である。近年、骨組織のハイドロオキシアパタイトCa10(PO4)6(OH)2の結晶と交換反応をする骨親和性放射性薬剤が開発された。一つはCaと同じアルカリ土類金属のストロンチウム-89(Sr-89 chloride,半減期:50.5日)であり半減期が長く、γ線を放出しない欠点があった。もう一つはサマリウム-153リン酸化合物(Sm-153 EDTMP,半減期:1.9日)であり半減期が短く、γ線を放出するが、β線のエネルギーが弱い欠点があった。これらの骨親和性の放射性薬剤は臨床的には骨の疼痛軽減効果を認めるも、骨髄抑制の副作用があり投与量当たりの骨摂取量を増強させる必要がある。我々は低Ca飼料および低リン酸飼料を作製し、これらの飼料で飼育したラットで放射性のCaおよびリン酸の骨摂取がどの様に変化をするか検討した。 8週令のウィスター系雄ラット(n=18)を対照群(C),低Ca群(A)および低リン酸群(B)に分けて特殊飼料で2週間飼育した。Tc-99mMDPおよびCa-47chlorideをそれぞれ静注し、24時間後の全身骨摂取を測定した後、屠殺して、Ca-47の大腿骨摂取を測定した。 Tc-99mMDPの全身骨摂取(%)はC群: 51.7±2.7, A群: 49.6±3.5, B群: 63.9±5.6 (p<0.01)であった。またCa-47chlorideの全身骨摂取(%)はC群: 80.2±2.7, A群: 93.7±3.1 (p<0.01), B群: 72.3±4.3 (p<0.01)であった。また、Ca-47の大腿骨摂取(% dose/g)ではC群: 3.76±0.33, A群: 4.27±0.15 (p<0.01), B群: 3.09±0.18 (p<0.01)であった。以上の結果より2週間の特殊飼料による飼育で低リン酸群(B)では対照群(C)に比べて全身骨で34.0%のTc-99mMDPの摂取増強が認められた。また低Ca群(A)では全身骨で16.3%,大腿骨で13.4%のCa-47摂取の増強が認められた。我々の方法は簡便に骨親和性放射性薬剤の骨摂取を増強させることができ、内部照射療法に応用可能である。
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