本年度はMR像と病理組織との対比に重点を置いて研究を進めた。婦人科の協力のもとに、約100症例のMR画像とマクロ切除標本、病理切片を対象とし信号の特性についての基礎的な検討を進めた。特にMR画像上の信号の変化をもたらす要因として、コラーゲンの有無、血管の寡多、細胞密度の程度、浮腫や壊死の有無について、詳細な検討を試みた。これにより正常例で見られる信号の変化を解析する上で重要な基本的データを収集する事ができた。子宮の筋層の信号に関しては、血管の多少のみならず、浮腫が非常に大きい役割を果たしていることが明らかとなり、また造影剤を用いた画像との対比によりこの浮腫の部分が造影されることを確認し他の臓器との違いが大きいことが明らかとなった。また筋腫の信号を詳細に検討することにより、コラーゲンの多少が信号を変化させる上で非常に大きい影響を示すことも明らかとなり、これらをまとめて今年度のうちにアトラスとして出版の予定である。また帝王切開及び経腟分娩前後の子宮頚部の変化を検討するためこれらMRI画像の蓄積につとめ信号の変化を中心に検討を進めた。帝王切開後の子宮頚部ついては、病理標本との対比により、頸部の菲薄化のみでなく菲薄部において平滑筋組織が繊維結合組織に置換している場合があること、及び、MRIはこういった変化を明瞭に示しうることが明らかとなった。この結果は次回分娩方法を決定する上で重要な指標となるものと考えられる。
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