研究概要 |
ヘリカルCTから再構成された3次元像の有用性を検討する目的で本研究を遂行した。対象は病理標本との対比が可能な肺癌症例とした。ヘリカルCTは東芝社製:X-Vigorを用い、撮像条件は120KV、100mA,ビーム厚:3mm、テーブル速度:3mm/秒、180度補間、再構成間隔:1mmである。以下2つの研究内容につき結果を要約する。 (1) 肺腺癌に見られる胸膜の引き込み像 術前の胸膜面を描出する3D-CTを検討対象とした。本像で胸膜の引き込み像は必らず複数存在し、それらが集中する中心域が見られた。これをPleural Convergenceとした。Pleural Convergenceの形態は術野に見られるものと良好な一致を見た。その中心域の直下に肺で覆われた肺胸膜と腫瘍の接触面が存在した。この面は術前CTで胸壁から離れて、直線状又は凹面状の腫瘍境界として見られた(lsolated Pleural Plane)。lsolated Pleural Planeは虚脱した肺標本では認識されず、隣接する伸展性に富む肺と胸膜によって覆われることで形成された。これが可能であった例はほとんどが組織学的にPOであった。 (2) 肺胸膜の循環ネットワーク 臨床CTで胸膜に接する微細な粒状影が正常でも観察される場合があった。これはリンパ路に沿って伸展するびまん性肺疾患では拡大し見易くなった。この構造について腺癌の切除肺で検討した。切除肺の3D-CTで肺胸膜に粗大〜微細な網状の構造が見られた(Pleural Network)。 Pleural Networkは不等辺多角形を形造り、その断面は元のCTで胸膜の肺との間に位置する粒状影に一致した。Pleural Networkは組織学にはリンパ管と肺静脈の胸膜枝から構成されていた。臨床CTでPleural Networkの肥厚を面として認識しうる部位は上中葉間であり、サルコイドーシスや癌性リンパ管症で見られた。 以上(1)、(2)の成果は3D-CTの応用無しには困難であった。
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