研究概要 |
磁気共鳴画像から大脳神経線維の分布を知るには、神経線維に沿う水分子の拡散現象が利用される。本研究はこの拡散現象をベクトル情報を含む画像データとして収集、その拡散テンソル値から神経線維の走行描出を行なうことを目的としたものである。撮像装置は1.5テスラ超伝導型撮像装置を使用、画像データの高速収集を必要とするためスピンエコー型のエコープラナー型撮像法(echo planar imaging,EPI)を基本パルス系列とし、ファントムおよび人間脳において拡散強調画像を撮像した。一画像の撮像に要する時間は約450msecであり、撮像時間の長さという点については問題はなかったが、空間分解能に限界があること、またEPIによる撮像法そのものが空間的な歪みを来たしやすいことなどの理由で、画像データの計算は困難であった。特に複数の撮像軸に拡散強調用の磁場勾配異を印加した場合、対象撮像領域内に生じる非直交性の拡散成分が実際の拡散テンソルの障害や得られる画像の空間的な歪みを作る原因として考えられた。この改善のため印加強度は同一ながら極性の異なる拡散強調用の磁場勾配を追加配列することにより、非直交性の拡散成分の除去を試みた。テンソルの計算に必要な画像データをより単純化できる効果は得られたが、以下の二つの問題点を解決する必要性が生じた。ひとつは拡散強調用の磁場勾配を追加することにより、励起から画像信号を得るまでのエコータイム(TE)が延長、十分なS/N比を有する画像が得にくくなること、二番目の問題としては、使用した1.5Tの撮像装置では拡散強調用の磁場勾配の印加強度に制限があり、拡散強調に必要な十分な磁場勾配因子(b factor)が得にくくなることであった。本研究では大脳白質線維を拡散テンソルからなる計算画像として描出することを試みたが、その実現には使用撮像装置や撮像パルス系列についてさらに検討が必要と思われる。
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