研究概要 |
糖類似物質で陽電子放出核種である^<18>F-Fluorodeoxyglucose(^<18>FDG)をもちいたポジトロン断層法(^<18>FDG-PET)により肺がんの糖代謝活性を測定し、切除後DNAフローサイトメトリーで測定した増殖能と比較することにより、肺がんの生体における糖代謝活性と増殖能との関係について検討した。現発性肺がん患者9例を対象として^<18>FDG-PETを施行し、肺がんの生体における糖代謝活性を測定した。肺がんの糖代謝活性の指標として、腫瘍のradioactivityを投与量、体重および腫瘍径で補正したStandardized uptake value(SUV)、および腫瘍径で補正した腫瘍のradioactivityと対側正常肺のradioactivityの比(T/N)を算出した。外科的切除により採取した肺がんの切除病巣からDNAフローサイトメトリーにより肺がんの核DNA量を測定し、核DNA ploidy patternを解析した。核DNA ploidy patternは、diploidy3例およびaneuploidy6例の2群に別れた。この2群の間でSUVおよびT/Nを比較したところ、diploidy群のSUVおよびT/Nはそれぞれ9.38±3.18、12.1±7.21、aneuploid群のSUVおよびT/Nは9.44±3.93、13.5±9.16であり、SUVおよびT/Nともに両群の間に有意差は認められなかった。また、DNAフローサイトメトリーにより癌細胞の細胞周期を解析し、増殖指数(S+G2M/G1+S+G2M×100%)を算出した。肺がんのSUVおよびT/Nと増殖指数との相関関係について検討したところ、T/Nと増殖指数との間に有意な正の相関関係(r=0.883,p<0.05)が認められた。さらに、腫瘍径3cm以下の原発性肺がん14例のSUVおよびT/Nを組織型別に比較したところ,腺がんのSUVおよびT/Nはそれぞれ7.02±0.85、9.55±3.24、扁平上皮がんのSUVおよびT/Nは12.2±2.54、16.5±2.54であり、扁平上皮がんのSUVおよびT/Nが腺がんよりも有意に高値を示した。以上の結果から、^<18>FDG-PETにより測定した肺がんの生体における糖代謝活性は増殖指数および組織型と関連があり、増殖能を反映していることが示唆された。
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