研究課題/領域番号 |
07671050
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
精神神経科学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
天野 直二 東京大学, 医学部・付属病院, 講師 (10145691)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
1997年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1996年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
1995年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 進行性核上麻痺 / 皮質基底核変性症 / グリア細胞骨格異常 / 嗜銀性構造物 / tuft-shaped as trocytes / glial coiled bodies / argyrophilic threads / astrocytic plaques / ピック病 / ガリアス・ブラーク染色 / tuft-shaped astrocyte / glial coiled body / argyrophilic thread / グリア細胞の骨格異常 / 星状膠細胞 / 会安起膠細胞 / 神経変性 |
研究概要 |
1. 進行性核上麻痺(PSP)12剖検例でその変性の広がりについて検討した。その神経変性には、神経細胞の脱落、線維性グリオーシス、アルツハイマー原線維変化の出現の3つの現象を指標とした。その結果、淡蒼球、視床、視床下核、視床下部、中脳黒質、中心灰白質、脳幹被蓋、小脳歯状核、下オリーブ核など主として皮質下諸核に高度に認められた。大脳白質では前頭葉を中心に淡明化と軽微な線維性グリオーシスが観察された。また、12例中6例に中心前回の深部に星状膠細胞の増生、神経細胞の脱落が認められた。 2. 進行性核上麻痺(PSP)12剖検例で、ガリアス・ブラーク染色を用いてグリア系の嗜銀性構造物の脳内分布を検討した。最初にこの嗜銀性構造物の形態は、(1)tuft-shaped astrocytes(TuSAs)、(2)glial coiled bodies(GCBs)、(3)argyrophilic threads(ATs)の3つに分けられた。上記の変性部位に一致して、嗜銀性の構造物が多数出現する傾向にあった。また、大脳白質や大脳皮質、特に中心前回、前運動領野などにも多く出現する傾向にあった。また、側頭葉での出現量は極めて少なく、前頭葉、後頭葉の分布は症例によりかなり異なっていた。TuSAsは、基本病変である皮質下諸核以外に大脳皮質にも分布する症例が多かった。GCBs、ATsについては、皮質下諸核や大脳皮質の分布状況はTuSAsにほぼ一致していたが、それ以外に近位する大小脳白質や神経線維束にも多数出現していた。 3. 免疫組織化学的技法を用いてこのグリア系の細胞骨格異常の性状について検討した。この性状はTuSAs、GCBs、ATsともにほぼ同じであり、また、ニューロンにみられるアルツハイマー神経原線維変化にかなり類似していた.すなわち、抗タウ蛋白抗体では陽性であり、ユビキチン、paired helical filamentにはごく一部が陽性であり、大半が陰性であった。 4. 皮質基底核変性症(CBD)5剖検例の検討から、TuSAsは大脳にはみられず、astrocytic plaques(APs)が大脳皮質を中心に灰白質に散見された。GCBs、ATsについては、PSPと同様に大脳に広汎に分布していた。免疫組織学的には、抗タウ蛋白染色、抗paired helical filament染色ではその性状には特に相違を認めなかった。APs、GCBs、ATsの分布は基本的には神経変性と並行していた。大脳皮質、大脳白質、視床、大脳基底核、脳幹、小脳にみる変性の軽重の異同はCBDではより多彩であり、その疾患のもつ多様性が指摘された。さらに、ピック病5例では、GCBs、ATsが大脳皮質、白質に極めて少量出現する例はみられたが、疾患におけるその意義は極めて少ないと判断された。 5. PSPとCBDは、グリア系の細胞に骨格異常を呈する代表的な疾患であるが、臨床的にはパーキンソン症状、頸部ジストニア、眼球運動障害、仮性球麻痺など神経症候に類似する点が多かった。失語症などの皮質症状が前景にみられる例がCBDにはみられたが、2疾患の臨床的な鑑別にも困難性が指摘された。PSPの定型的な臨床経過を呈しながら、グリア細胞の骨格異常の観点からTuSAs、APsがともにみられない症例が1例あり、移行例とかCBD例として判断すべきなのか、現状では病理診断の難しい例であった。結論的には、TuSAsとAPsが病理学的には大まかな指標に挙げられるが、それのみで病理学的に鑑別できるものではないと考えられた。
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