研究概要 |
1.非定型痴呆(ファー症候群を伴う非アルツハイマー非ピック痴呆)診断基準の確立. 我々の提唱する非定型痴呆の臨床例を詳細に再検討することによって以下のような診断基準を確立した. 1)臨床診断基準.(1)ICD-10またはDSM-IV等のcriteriaで痴呆が認められる.(2)記憶及びその他の認知機能の進行性の悪化.(3)人格変化(社会的,倫理的変化),脱抑制による症状が早期からみられる.(4)早期より病識が欠如する.(5)意識障害はない.(6)65歳以前の初老期の発症が多い.(7)記憶及び認知の進行性障害の原因となる全身疾患や,他の脳疾患がみられない(除外診断が必要).(8)CT所見として,側頭葉(と前頭葉)の萎縮,脳室拡大,大脳基底核(時に,大脳皮質,白質,小脳)の石灰化像.この他診断を支持する所見,非特異的症状などについても詳細なものを作成した.今後はこの診断基準の妥当性を検証するとともに臨床での応用を目指したい. 病理診断基準.(1)大脳皮質の広範で多数な神経原繊維変化の存在.(2)老人斑の欠如.(3)Fahr型の石灰(偽石灰)沈着.(4)側頭葉及び前頭葉の限局性萎縮(PD型).(5)萎縮部位の大脳白質の脱落と繊維性グリオーシス.(6)Meynert基底核の軽度から中等度の神経細胞脱落. 2.非定型痴呆患者での病態関連遺伝子の検索. 倍検例6例及び臨床的に非定型痴呆と考えられる患者のゲノム遺伝子を検索した.APOE genotyping,APP遺伝子でのアルツハイマー病に関して報告された変異についてまず検索した.幾つかの所見が得られたが例数が少ないため統計的に有為な結論はまだ下せない段階である.またタウ遺伝子についても現在検索中であるが今のとろ目立った変異は見つかっていない.今後非定型痴呆の症例数を増やすとともに更なる検索を進めていく.
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