研究概要 |
申請者らは本研究により、まず、膵島を含む殆どすべての組織に発現する新たな内向き整流性K^+チャネルuK_<ATP->1(Kir6.1)をクローニングした。次に、これをプローブとして膵島や心筋・骨格筋に発現する新たな内向き整流性K^+チャネルサブユニットBIR(Kir6.2)を単離し、膵β細胞に発現するK_<ATP>チャネルが、Kir6.2とAguilar-Bryanらによってクローニングされたスルホニール尿素(SU)剤のレセプター(SUR1)の複合体であることを世界で初めて明らかにした(Inagaki et al.,Science270,1995)。さらに心筋・骨格筋に発現し、SUR1と68%のアミノ酸一致を有する新たなSUR(SUR2)のcDNAを単離し、1)SURにはファミリーが存在すること、2)心筋・骨格筋のK_<ATP>チャネルがKir6.2とSUR2の複合体であること、3)K_<ATP>チャネルのSU剤やATPに対する感受性はSURサブユニットによって決定されること、を明らかにした(Inagaki et al.,Neuron 11,1996)。さらに、申請者らはヒトKir6.2遺伝子の構造と染色体上の局在を明らかにし、ヒトSUR1遺伝子とKir6.2遺伝子が第11染色体短腕p15.1に隣接して存在することを明らかにした。最近、これらの遺伝子は家族性低血糖症(persistent hyperinsulinemic hypoglycemia of infancy,PHHI)の原因遺伝子となりうることが示されたが、インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)との関連については、日本人NIDDM患者の同胞対解析を用いて検討を行ったところ、SUR1ならびにKir6.2遺伝子近傍の遺伝子マーカーとNIDDMに有意な相関は認められなかった(Iwasaki et al,Diabetes 45,1996)。さらに、Kir6.2遺伝子には23番目のアミノ酸のGlu->Lys変異(E23K)、337番目のアミノ酸のIle->Val変異(I337V)等が認められたが、コーカシアンや日本人において健常人とNIDDM患者の間でそれらの変異の頻度に差が認められなかったことから(Inoue et al.,Diabetes 46,1997)、SUR1あるいはKir6.2遺伝子は主たるNIDDMの原因遺伝子ではないことが明らかとなった。
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