研究概要 |
インスリン受容体は他の増殖因子受容体と同様、タイロシンキナーゼ活性を有しているが、特徴的なことはIRS-1(insulin receptor substrate-1)と名付けられた分子量180kDa前後の蛋白をリン酸化し、これに多くのシグナル伝達物質が結合することである。インスリンによる増殖促進作用のみならず糖代謝の促進作用においてもIRS-1が重要な役割を果たしていると考えられている。そこでリン酸化されたIRS-1に結合する蛋白のクローニングを行いその結果、既に報告されている既知のNcK,p85a,p85b,Grb-2,SHPTP2などの他、50kDa(p50α)と55kDa(p55α,p55γ)の新規PI-3kinase調節サブユニットをクローニングすることに成功した。これらはSH3domainやbcrdomainを欠いており、p55αとp50αはp85α遺伝子より、alternative splicingによって生じた産物であった。これらSH3domainやbcr domainを欠くPI-3 kinase調節サブユニットはNorthern blotやWestern blotによって脳や筋肉を含む種臓器に豊富に発現していることが明らかとなった。PI-3kinaseの活性化はインスリンによる細胞へのグルコース取り込みの促進に不可欠な役割を果たしており、これらがインスリン作用にどのように関連しているかを今後検討する予定である。
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