研究概要 |
(1)インスリン受容体,IGF-O受容体のハイブリッド受容体機能の検討:インスリン受容体異常症の患者で同定したインスリン受容体キナーゼ変異体(Haruta T., Takata Y., et al. Diabetes 42 : 1837, 1993)を用いたハイブリッド受容体機能の解析を行った.この変異受容体の存在は同時にある野生型のIGF-I受容体のシグナル伝達を障害することを明らかにした.その障害はIGF-Iによるチミジン合成促進やアミノ酸合成の成長促進作用に比較的特異的でグリコーゲンの取り込み促進でみた代謝促進作用は抑制されなかった.受容体以降のシグナル伝達ではShcとmitogen-activated protein (MAP)キナーゼの活性化が障害されていた.この原因として、細胞でこの変異インスリン受容体とIGF-I受容体のハイブリッドの存在が重要である事を示し、ハイブリッド受容体の割合を減少させることでIGF-Iのシグナル伝達が改善することを明らかにした. (2)高インスリン状態がハイブリッド受容体機能に及ぼす影響:高インスリン状態は細胞のインスリン、及びIGF-I抵抗性をきたす.この際にハイブリッド受容体はdown regulationされなくてもそのチロシンキナーゼ活性が障害されていることを明らかにした.またチロシンキナーゼ変異受容体をパートナーにもつハイブリッドのIGF-Iによるチロシンキナーゼ活性が見られないことと合わせてハイブリッドには正常な機能をもつインスリン受容体が必要である事を示した. (3)インスリン受容体機能に及ぼす因子の解析:受容体チロシンキナーゼが経口血糖降下剤の直接の標的となっているかを膵外作用の強い新しいスルホニル尿素剤とインスリン抵抗性改善剤を用いて検討した.また高遊離脂肪酸状態がインスリン受容体機能に及ぼす影響も検討した.
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