研究概要 |
本態性高血圧症は,高血圧発症前に血管平滑筋細胞の増殖を促進する高インスリン血症を認める。本態性高血圧症の動脈硬化に対する高インスリン血症の役割については不明な点が多い。本研究では,本態性高血圧症のモデルである自然発症高血圧ラット(SHR)と対象ラット(WKY)の胸部大動脈平滑筋細胞(VSMC)を用いて,バゾプレシン(AVP),エンドセリン(ET-1)そしてPDGFによる細胞増殖の私指標であるMilogen-activated protein Kinase(MAPキナーゼ)と^3H-Hymidine取り込みに対するインマリンの効果を検討した。(結果)0.1μMインスリンの24時間前処置は,SHRの^3H-Hymidine取り込みの基礎値の4増強し、AVPによるWKYとSHRの^3H-Hymidineの取り込み亢進を促進したが,この促進効果はSHRで顕著であった。インマリンの前処置は,WKYとSHRにおけるMAPキナーゼの基礎値には影響を与えなかったが,AVPによるWKYとSHRのMAPキナーゼの賦活化を増強した。この増強効果SHRで顕著であった。インマリンの前処置は,WKYとSHRにおけるAVP V_1受容体の親和性と受容体数には影響しなかった。インマリンの前処置は,WSKとSHRにおけるAVPによる〔Ca^<2+>〕-,動員には影響しなかった。ET-1cPOGFでもほぼ同様の結果であった。以上により,インマリンの前処置は,AVPとET-1のV_1の受容体とCa^<2+>の動態には影響することなく,AVP, ETそしてPDGFによるVSMCの増殖作用をWKYに比較しSHRにおいて顕著に増強することが示唆される。高インマイン血症は、高血圧症における動脈効果の進展に関与していることが考えられる。この結果は,日本糖尿病学会と日本内分泌学会で発表した。
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